シンプルなミシンが欲しい=安いミシンが欲しいということ?

元ミシン屋として多くのお客様のミシン選びに関わってきましたが、「シンプルなミシンが欲しい」とおっしゃるお客様の多くは、実は「安いミシンが欲しい」という意味でおっしゃっていることがほとんどでした。

「直線だけ縫えればいい」というお客様に「直線だけ縫えるミシンは職業用ミシンしかなくてお値段が10万円くらいになる」ことを伝えると「直線だけじゃなくてもいい。もっとお手頃なミシンが欲しい」と本音をお伺いすることができました。

「縫い模様が少ないほど安い」というイメージをお持ちの方が多いのですが、実際には縫い模様の数はミシンの価格にほとんど影響しません。

では何が価格を左右するのでしょうか。次のセクションで詳しく解説します。

→ ミシン選びの基本について詳しく知りたい方はこちら ミシン完全ガイド

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ミシンの価格を左右する3つのポイント

ミシンの価格を左右するのは縫い模様の数ではなく、主に以下の3つです。

縫い目の綺麗さ

直線縫いひとつとっても、ミシンによって縫い目の美しさは大きく異なります。生地をしっかり送る送り歯の性能や、針の精度など、目に見えない部分の品質が価格に反映されています。縫い目が綺麗なミシンほど、価格が上がる傾向があります。

耐久性

長く使えるミシンは、内部のフレームや部品に丈夫な素材が使われています。安価なミシンはプラスチック製のパーツが多く、使い込むうちに不具合が出やすくなることがあります。耐久性の高いミシンほど価格が上がる傾向があります。

使いやすさ

使いやすさに関わる機能が充実するほど価格は上がります。特に以下の4つは価格に大きく影響します。

自動糸通し 針穴への糸通しをレバー操作ひとつで行える機能です。「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、針穴は非常に小さく、特に老眼が始まった方には糸を通すだけで一苦労になることも。手動だと何度もやり直してストレスを感じる場面が、レバーひとつで一瞬で解決します。

自動糸調子 生地の厚さや種類に合わせて糸の張り具合を自動で調整してくれる機能です。手動の場合はダイヤルを回しながら何度も試し縫いをして調整する必要があります。薄地・厚地・ニットなど生地が変わるたびに調整が必要なので、自動糸調子があるだけで準備の手間が大幅に減ります。

自動糸切り 縫い終わりの糸をボタンひとつでカットしてくれる機能です。作品を作っていると糸を切る機会は何十回と出てきます。その度にハサミを手に取るのと、ボタンひとつでカットできるのとでは作業のスムーズさに大きな差が生まれます。元ミシン屋として多くのお客様と接してきましたが、買い替えを検討されているお客様の中には「次のミシンも自動糸切りがついていないと絶対にイヤ」とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。一度使うと手放せない機能のひとつです。

ふところの広さ 針から右側の作業スペースのことです。このスペースが狭いと、バッグや洋服などの大きな作品を縫うときに生地がミシン本体に当たってしまい、まっすぐ縫えなくなることがあります。小物づくりがメインであれば気になりませんが、洋服やバッグをよく作る方はふところの広いミシンを選ぶと作業がぐっと楽になります。


価格帯別おすすめシンプルミシン5選

ここからは価格帯別におすすめのミシンを5機種紹介します。価格が上がるにつれて使いやすさに関わる機能が充実していくので、「最低限この機能は欲しい」と思えるラインを見つけながら読んでみてください。


1万円台|ブラザー PS102X

1万円台でミシンを探している方に向けた機種です。自動糸調子・自動糸切りはなく、縫い目の長さや振り幅の調整もできません。機能は最低限ですが、この価格帯の中では品質・信頼性ともに安定しているブラザーの機種を選びました。

「とにかく安く始めたい」「まず試してみたい」という方向けの1台です。ただし、次に紹介するPS202Xとの価格差は5000円程度。その差で縫い目の長さや振り幅の調整ができるようになり、できることの幅が大きく広がります。予算に少し余裕があるならPS202Xも合わせて検討してみてください。

項目スペック
自動糸通し
自動糸調子×
自動糸切り×
振り幅調節×
送り量調節×
縫い模様数12種類
重量4.8kg
サイズ31.0×41.3×16.9cm
フットコントローラー別売り

2万円台|ブラザー PS202X

PS102Xから約5000円アップするだけで、縫い目の長さ(送り量)と振り幅が自分で調整できるようになります。生地や用途に合わせて縫い目を変えられるのは、作品のクオリティに直結する大切なポイントです。

自動糸調子・自動糸切りはまだついていませんが、コンパクトで軽量なので置き場所を選ばず、久しぶりにミシンを再開する方にも扱いやすい1台です。

「とにかく安く始めたいけど、最低限の調整はできるミシンが欲しい」という方におすすめです。

項目スペック
自動糸通し
自動糸調子×
自動糸切り×
振り幅調節
送り量調節
縫い模様数20種類
重量4.8kg
サイズ31.0×41.3×16.9cm
フットコントローラー別売り

3万円台|ジャノメ JN831

この価格帯からいよいよ自動糸調子・自動糸切りが搭載されます。ここから一気に使いやすさが上がるので、予算に余裕があるならJN831以上を検討することをおすすめします。

JN831の特徴はなんといってもフットコントローラー・ワイドテーブル・ハードケースが標準で付属している点です。別売りになりがちなこれらのアクセサリーがセットになっているので、追加費用なしでそのまま本格的なソーイングが楽しめます。

縫い模様は59種類と今回紹介する5機種の中で最も多く、洋服作りに必要なステッチが一通り揃っています。「シンプルなミシンが欲しい」と思って来られた方でも、この価格帯なら満足度が高い1台です。フットコントローラーやワイドテーブルまで含めたトータルコストで考えると、非常にコスパの高い機種といえます。

項目スペック
自動糸通し
自動糸調子
自動糸切り
振り幅調節
送り量調節
縫い模様数59種類
重量5.6kg
サイズ幅406×奥行184×高さ298mm
フットコントローラー標準付属

4万円台|シンガー SY-180E

自動糸調子・自動糸切りはもちろん、7枚歯送りを搭載したフルサイズのコンピューターミシンです。重量は8.5kgとJN831より約3kg重くなりますが、これはフレームにしっかりした素材が使われている証拠でもあります。速度を上げても本体がブレにくく、安定感のある縫い心地が特徴です。

縫い模様は25種類とシンプルにまとまっており、「余計な模様はいらないけど基本的な縫いはしっかりできるミシンが欲しい」という方にぴったりの1台です。

なおフットコントローラーは別売りになります。使いたい場合は別途購入が必要な点にご注意ください。

項目スペック
自動糸通し
自動糸調子
自動糸切り
振り幅調節
送り量調節
縫い模様数25種類
重量8.5kg
サイズ高さ287×幅439×奥行195mm
フットコントローラー別売り

5万円台|ブラザー オリビア500

今回紹介する5機種の中で最上位モデルです。自動糸調子・自動糸切りはもちろん、フットコントローラーが標準付属している点がSY-180Eとの大きな違いです。

ブラザー独自の新設計の押さえと送り歯を採用しており、従来のミシンより押さえと送り歯が前後に長く設計されています。これにより生地をより広い面積でしっかり挟み込むことができ、特に直線縫いの安定感が大きく向上しています。デニムなどの厚地や段縫いの箇所でもスムーズに縫い進められます。

重量は9.0kgとずっしりしていますが、その分本体の安定感は抜群で、速度を上げてもブレずに縫い続けられます。

実際に私自身が使用しているミシンでもあり、縫い目の綺麗さと使い心地には自信を持っておすすめできる1台です。「長く使えるミシンを最初から買いたい」という方にぜひ検討してほしい機種です。

項目スペック
自動糸通し
自動糸調子
自動糸切り
振り幅調節
送り量調節
縫い模様数20種類
重量9.0kg
サイズ高さ300×幅444×奥行240mm
フットコントローラー標準付属

番外編|フットコントローラーで使いたい人向け|シンガー SN1851

「昔のミシンと同じようにフットコントローラーで操作したい」という方に向けた番外編です。

SN1851はコンピューターミシンではなく電動ミシンです。コンピューターミシンと大きく異なる点が2つあります。

ひとつ目は手元での操作ができないことです。スタート・ストップ・スピード調整のすべてがフットコントローラー操作式になっています。昔のミシンに慣れている方には逆に使いやすいと感じる方も多いですが、手元で操作したい方には向きません。

ふたつ目は電動ミシン特有のパワーの出方です。コンピューターミシンは速度に関わらず一定のパワーが出ますが、電動ミシンはスピードを上げるほど生地を貫通するパワーが上がる仕組みになっています。そのため、デニムなどの厚い生地をゆっくり丁寧に縫いたい場合はコンピューターミシンの方が向いています。

フットコントローラーが標準付属で、レトロなデザインも人気の1台です。

項目スペック
タイプ電動ミシン
自動糸通し
自動糸調子×
自動糸切り×
振り幅調節
送り量調節
縫い模様数31種類
重量5.7kg
サイズ幅416×奥行193×高さ300mm
フットコントローラー標準付属

→ 電動ミシンをもっと詳しく知りたい方はこちら 電動ミシンおすすめ

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よくある質問

Q:シンプルなミシンで洋服は作れますか?

A:作れます。ただし洋服作りには直線縫い・ジグザグ縫い・ボタンホールなどの基本的な縫い模様が必要です。今回紹介した機種はいずれもこれらの基本縫いに対応しているので、洋服作りに必要な機能は十分に揃っています。

Q:縫い模様が少ないミシンと多いミシン、どちらがいいですか?

A:日常的なソーイングであれば縫い模様が少ないミシンで十分です。実際に使う縫い模様は直線・ジグザグ・裁ち目かがり・ボタンホールがほとんどで、100種類以上の模様があっても使わないものがほとんどというケースは珍しくありません。縫い模様の数より、自動糸調子や自動糸切りなど使いやすさに関わる機能を重視して選ぶことをおすすめします。

Q:自動糸調子がないミシンでも綺麗に縫えますか?

A:縫えます。ただし生地が変わるたびに手動でダイヤルを調整する必要があります。薄地・厚地・ニットなど異なる生地を縫う機会が多い方は、自動糸調子があると準備の手間が大幅に減ります。

Q:久しぶりにミシンを使います。どの価格帯がおすすめですか?

A:3万円台のJN831をおすすめします。自動糸調子・自動糸切り・フットコントローラーがすべて揃っており、久しぶりにミシンを再開する方でもストレスなく使い始められます。価格はそれほど高くなく、長く使えるコスパの高い1台です。

Q:フットコントローラーは必要ですか?

A:必須ではありませんが、あると便利です。両手が自由に使えるので、カーブ縫いや大きな作品を縫うときに特に役立ちます。昔のミシンに慣れている方はフットコントローラーの方が使いやすいと感じる方も多いです。今回紹介した機種ではJN831とオリビア500が標準付属、番外編のSN1851も標準付属です。

Q:電動ミシンとコンピューターミシンの違いは何ですか?

A:大きな違いはパワーの出方と操作性です。電動ミシンはスピードを上げるほど生地を貫通するパワーが上がる仕組みで、手元での操作ができないものがほとんどです。コンピューターミシンは速度に関わらず一定のパワーが出るため、厚い生地をゆっくり丁寧に縫うことができます。また手元のボタンで操作できるので、細かい作業がしやすいのも特徴です。

Q:自動糸切りは便利ですか?

A:なくても困りませんが、あるととても便利です。作品を作っていると糸を切る機会は何十回と出てきます。その度にハサミを手に取るのと、ボタンひとつでカットできるのとでは作業のスムーズさに大きな差が生まれます。元ミシン屋として多くのお客様と接してきましたが、買い替えを検討されているお客様の中には「次のミシンも自動糸切りがついていないと絶対にイヤ」とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。一度使うと手放せない機能のひとつです。


まとめ

「シンプルなミシンが欲しい」という気持ちの裏には「安いミシンが欲しい」という本音が隠れていることが多いですが、ミシンの価格を左右するのは縫い模様の数ではなく、縫い目の綺麗さ・耐久性・使いやすさです。

今回紹介した5機種をあらためて整理すると、3万円台のJN831から自動糸調子・自動糸切りが搭載され、使いやすさが一気に上がります。予算に余裕があるならJN831以上も検討することをおすすめします。私の1番のおすすめはオリビア500です。ミシンを使用するのに慣れてくると縫う速度を上げたくなりますが、速度を上げて縫ってもガタ付きが少なく、綺麗に縫うことができます。

「まずは安く始めたい」という方はPS102XやPS202X、「フットコントローラーで使いたい」という方は番外編のSN1851も選択肢のひとつです。

ご自身の予算と使い方に合ったミシンを見つけて、ソーイングを楽しんでいただければ幸いです。

→ その他のおすすめミシンはこちら おすすめミシン一覧

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けい | 元ミシン屋店長
元ミシン屋店長・ミシン相談件数1000件以上。 これからミシンを始める方から、もっと上手になりたい方まで、 「選び方」「使い方」「メンテナンス」「トラブル対応」を わかりやすくお伝えしています。